研究領域3:制度資本(テーマ2)
学校保健活動の見える化と改善サイクル構築プロジェクト
京都大学 Beyond 2050 社会的共通資本研究部門の喜屋武 享(きゃん・あきら)と申します。
本ページでは、私の研究プロジェクトについて、簡単にご説明させていただきます。
研究の背景と課題
日本全国の小中高校における学校保健活動(保健指導や健康づくりの取り組み)は法律に基づき実施されています。
しかし、自治体や各校の裁量に委ねられているため、実施内容や効果測定に大きなばらつきがあります。
「どんな活動が、どれだけ子どもたちの健康を支えているのか?」という問いに、共通の基準やデータがありません。
研究のねらい
そこで私たちは、世界保健機関(WHO)が提唱する「ヘルスプロモーティングスクール(Health Promoting Schools:HPS)」の考え方を土台に、日本版の評価指標を開発します。
そして、学校保健活動の「計画・実施・評価・改善(PDCA)」を学校現場に定着させる仕組みをつくります。
進め方のポイント
1)指標開発
オランダ発のHPS質問票を翻訳し、日本でも適応可能か確かめます。
教職員の健康リテラシーや教職員同士の信頼関係なども測定し、その関連を検証することで日本版HPS評価票を作成します。
2)Webアンケート調査
日本国内の公立学校175校の校長・養護教諭・保健体育教諭らに協力を依頼。現状の実施状況や課題感を把握します。
3)信頼性・妥当性の検証
集めたデータを因子分析や相関分析で検証し、指標として使えるかどうかを確認します。
4)現場試行とフィードバック
自治体の教育関連部局と連携し、実際の学校で試行。教職員からの意見を取り入れ、評価票や運用マニュアルをブラッシュアップします。
期待される成果
- 教職員が自校の健康づくりの「強み・弱み」を客観的に把握できるようになります。
- PDCAサイクルが回ることで、子どもの健康を支える活動の質が継続的に向上します。
- 成果が全国に広がれば、地域間・学校間の健康格差の是正にもつながります。
研究責任者の想い
私は未来の社会を築く子どもたちの生きがいを育むことが大人の使命だと思っています。
「子どもたちの健康やWell-beingを育む場としてふさわしい場になっているのか」これが私の最も根本にある問いです。
現状、これに応えられるだけの情報(エビデンス)が極めて限られています。
この研究がその問いに答える第一歩です。この取り組みが、子どもたちの健やかな成長を後押しする一助になることを切に願います。
研究チームメンバーの紹介
喜屋武 享(きゃん あきら)
京都大学 成長戦略本部 Beyond 2050 社会的共通資本研究部門 特定准教授
琉球大学 医学部保健学科 准教授/Ph. D. in Health Science 博士(保健学)
沖縄生まれ沖縄育ち。保健体育の教員を目指して大学に進学したが、関心の方向性が教育から人々の生活に向かったことから研究者の道を志す。研究の大テーマは「青少年における健康の社会的決定要因の解明」。最近の研究では、青少年の健康行動においてCOVID-19前後で社会経済的格差の様相が変容していることを明らかにした。2022年に日本体力医学会奨励賞、2023年に日本健康教育学会奨励賞、2025年に日本学校保健学会査読者賞を受賞。沖縄女子短期大学助教、神戸大学大学院助教、京都大学大学院助教を経て現職。
研究者プロファイル:https://researchmap.jp/_kyankyan67
研究室HP:https://hpsh-ryukyu.com/
升川清則(ますかわ きよのり)
関西福祉大学教職センター教授/修士(教育学) M.Ed. in Educational Science
高倉 実(たかくら みのる)
名桜大学大学院健康スポーツ科学研究科/琉球大学名誉教授 Ph. D. in Medicine
長谷田真帆(はせだ まほ)
京都大学大学院医学研究科社会疫学分野 講師/ Ph. D. in Medicine
近藤尚己(こんどう なおき)
京都大学Beyond 2050 社会的共通資本研究部門 部門長/教授。
