研究領域3:制度資本(テーマ3)

寄付募集のための制度的実践のアクションリサーチ

皆さんは「社会的共通資本(Social Common Capital:SCC)」という言葉を聞いたことがありますか?

宇沢弘文先生が提唱された、私たちの豊かな暮らしに欠かせない社会の共通資産のようなものです。

(詳しくは、下記の記事をご覧ください!)

社会的共通資本(Social Common Capital)とは?

SCCとは例えば、海や森といった自然資本、道路や港湾といった社会インフラ、あるいは医療や教育といった制度資本などですね。

京都大学の「Beyond2050 社会的共通資本研究部門」では、SCCのうち、特に「制度資本」を深く理解するため、ユニークなアプローチで研究を進めています。

つくってみて理解する「制度資本」

そのアプローチとは、「つくってみることで理解する」というもの。

自然科学における合成生物学にも似た「合成的制度研究」ともいうべき立場です。

では、どのような「制度資本」をつくるのか?

それは、大学というSCCを支える「寄付」が集まるような制度資本です。

つまり、単に寄付を集めるだけでなく、どうすれば寄付が集まる「仕組み」そのものを作れるのかを研究する、ユニークな挑戦なんです。

私たちが生み出そうとしているのは、「寄付が集まるような制度資本」です。

例えば、

・寄付募集における業務のフロー
・チームメンバーの役割分担
・研究部門としての寄付募集の目的・目標
・法律を遵守するための、寄付募集にあたっての内部ルール

など、広い意味での「制度」が蓄積されて育まれると思われるものが、今回つくろうとしている制度資本です。

(先に挙げた「教育」や「医療」といった制度資本も、様々なルール、フロー、目標などの集合体として捉えることができます)

今回の研究では、制度資本をつくるための様々な活動を、経営学の「制度的実践」という用語で整理し、実行していきます。

制度資本ができると、当部門がもつ

・「社会関係資本」(人との繋がり、規範)
・「文化資本」(ブランド、共有価値)

が高まり、その結果として「経済資本」たる寄付金が集まる・・・。

そんな仮説を持っています。

こうして、SCCとしての制度資本や、それが他の資本を生み出していくプロセスをより解像度高く理解したいと考えています。

アクションリサーチから、寄付文化の発展へ

この研究のユニークな点は、研究者が実際に寄付募集活動を行いながら、そのプロセスを同時に研究する「アクションリサーチ」であることです。

さらに、活動の質を科学的に高めるため、インターネット上のA/Bテストのようなデータ分析を取り入れます。

例えば、ウェブサイトのメッセージの違いで、寄付への関心度がどう変わるかを検証し、データに基づいて判断します。

これにより、単なる経験論ではない、再現性のある「寄付が集まる仕組み=制度資本」の理論への貢献を目指しています。

日本では、多くの非営利組織が寄付募集に苦労しています。

この研究は、まさにこの社会的な課題に応える可能性を秘めています。

組織がどうやって、どんな資本を蓄積すれば寄付が集まるのか。

そのメカニズムを解明し、再現可能な方法を示すことで、社会全体の寄付文化の発展に貢献したいと考えています。

おもしろいんじゃない?と思った方は、ぜひ下記ページもご覧ください。

 

領域リーダー:渡邉文隆(わたなべ・ふみたか)特定准教授
中学3年時に父親を亡くし、あしなが育英会の奨学生として高校・大学に進学。大学時代には劇団に所属しつつ、あしなが学生募金事務局での街頭募金活動に参加。2度休学し、ブラジルではHIV陽性者の相互扶助団体で活動、ウガンダではエイズ孤児支援団体で活動。環境ビジネスのアミタ株式会社に勤務の傍ら、デジタルハリウッド大学大学院で修士号を取得。2013年から京都大学iPS細胞研究所にて寄付募集に従事。2020年から(公益財団法人)京都大学iPS細胞研究財団に転籍、職務の傍ら京都大学経営管理大学院博士後期課程で研究。2023年に博士号(経営科学)取得。現在、京都大学成長戦略本部特定准教授。同大学Beyond 2050 社会的共通資本研究部門では、寄付募集の研究を行う。『寄付白書2021』や『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』の執筆に参加。
これまでの業績: https://researchmap.jp/watanabe-fumitaka

領域メンバー:川村健太・近藤尚己